メールマガジン第52号

全国盲ろう者団体連絡協議会メールマガジン第52号

2021年12月15日発行

全国盲ろう者団体連絡協議会(以下、「連絡協議会」という)

<目次>

1.会長からのメッセージ

会長 大杉  勝則(おおすぎ かつのり)

コロナの状況がだいぶ落ち着いてきましたが、いかがお過ごしでしょうか?
しかし、年末年始あたりから第6波が予想されています。
今しばらく警戒を続けましょう。
さて、衆議院議員選や県知事選、市長選などの選挙に行かれたみなさん、いかがでしたか?
もし、困ったことや疑問を抱いたことなどがありましたら、ぜひお聞かせください。
ある盲ろう者から、『自分は昔見えていた頃は、文字を書いていました。今は全盲になり、投票用紙に候補者の名前をきれいに書くことが難しくなり、係員に代筆を頼んでいる。』 と聞いたことがあります。
確かに、視覚障害のある人が記入する手段は3通りありますね。
・自分で書く。
・点字で書く。
・係員に代筆をしてもらう。
で、自分で書く場合は、別にきれいに書かなくてもいいです。
記入枠からはみ出しても、大丈夫です。
また、候補者の名前を正確に書かなくても、名字だけをひらがなで書いても問題ないです。
要するに、開票担当者が判読できればいいです。
これらのことは、選挙管理委員会にも確認済みです。
以前、自分で文字を書いていた大杉も、全盲ろうになった後、投票用紙の記入枠がわかるように、用紙を半分に折って記入台に向かいます。
そして、候補者の名前の名字だけをひらがなで書いています。
自分で書くことができるから、全盲になっても、書けるところは自分で書きたいですね。
ご参考までに知っていただければ、幸いです。
それから、鉛筆の字が薄くて見えない弱視の方、サインペンなどを持参して書いても大丈夫であることも言い添えておきます。

2.政策委員会の報告

副会長 門川 紳一郎(かどかわ しんいちろう)

 今回は、前回に続き9月に開催された第56回と57回の会議と、11月に開催された58回と59回会議のご報告を致します。なお、10月中は政策委員会は開催されませんでした。
 まず、9月13日と27日の政策委員会では、5月に成立した「改正障害者差別解消法」が公布日(6月4日)から3年以内に施行されるのに先だって、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(以下、基本方針)を見直すことになっています。基本方針の見直しに当たり、全国の主な障害者団体や民間事業者団体へヒアリング(意見聴取)がおこなわれました。まず、9月13日と27日に開催された政策委員会の場で、障害者団体へのヒアリングが実施されました。ヒアリングの対象となった障害者団体には、DPIや日本弱視者ネットワーク、日本筋ジストロフィー協会、日本発達障害ネットワーク、ろうあ連盟等、約30団体ありました。全国盲ろう者協会は、27日にヒアリングの順番がまわってきましたので、私が盲ろう者の立場から「基本方針」に関する意見を発表しました。発表時間は、1団体3分程度と短く、十分な意見を述べることはできませんでした。
 ヒアリングの質問項目は、大きく次の3点がありました。

1.行政機関等及び事業者が講ずるべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項について。→不当な差別的取り扱いの基本的な考え方」等。合理的配慮の提供について。

2.国及び地方公共団体による障害を理由とする差別を解消するための支援措置の実施に関する基本的な事項について。→相談体制のあり方、啓発活動事例の収集・共有等。

3.その他。→その他、検討すべき点等。

 私からは、「基本方針」の見直しの際には次の事を反映して頂きたいことを訴えました。

1.意思疎通困難者が差別的取り扱いを受けないように十分な法的措置を講じてほしい。

2.障害の多様性や障害に起因するコミュニケーションの困難さに十分に配慮し、障害者が理解しやすいように「わかりやすさ」と、「ゆっくり」したペースでコミュニケーションが進行する」ように配慮することに留意してほしい。

3.合理的配慮の好事例を、具体的かつ分かりやすく紹介して頂きたい。また、盲ろう者に関連する事例を集めて頂きたい。

 「基本方針」改定のためのヒアリングは、障害者団体に対してだけでなく民間事業者に対しても実施されました。11月15日開催の第59回政策委員会の場において、全国知事会、全国市長会の他、全国ハイヤー・タクシー連合会、全国銀行業協会等12の民間事業者団体へのヒアリングが実施されました。

 次に、11月1日に開催された第58回政策委員会では、「第5次障害者基本計画」策定に向けた取り組みがはじまりました。現行の第4次障害者基本計画(平成30年度から令和4年度)の実施状況や、第4次計画で示された数値目標がどこまで達成できているかといったことを、まず確認することからはじまりました。

内閣府をはじめ、各省庁から第4次基本計画の実施状況の報告があり、それを受けて、政策委員から各省庁へ質問するという形で会議は進行しました。

3.盲ろう者の電話リレーサービス利用実証実験及びシステム等改善のための検討会がスタート

副会長 門川 紳一郎(かどかわ しんいちろう)

 この度、全国盲ろう者協会と日本財団電話リレーサービスの協力の下で、盲ろう者の電話リレーサービス利用の実現のための実証実験がうごきはじめました。

 9月はじめ頃、総務大臣より指定を受けた電話リレーサービス提供機関である日本財団電話リレーサービスと盲ろう者協会事務局長の間で話し合いが持たれ、その結果、さっそく日本財団電話リレーサービス・カスタマーリレーションチーム側で電話リレーサービスのテスト用電話番号を準備して頂き、盲ろう者協会内で実証実験を進めて行くことになりました。
 方法は、テスト環境用の電話番号とパスワードを使って、協会事務所のパソコン等でテストを実施しました。
 実証実験では、いろんなタイプの盲ろう者のユーザーにテスト環境用の電話番号またはテスト環境用を備えた実機で実際に電話リレーサービスを利用してもらい、改善点等を洗い出して行きたいと考えています。

 第1回目の実証実験では、下記の報告の通り、私、門川が点字ディスプレイを用いて実験に参加しました。
なお、2回目は、弱視難聴の庵さん(盲ろう者協会職員)が、ご自分で持参したiPadを使って、実際に電話リレーサービスを利用されました。
 以下は、第1回目の実証実験結果報告の概要です。

 使用したパソコン: Windows10
 使用した点字ディスプレイ: ブレイルメモスマート40(KGS株式会社)
 使用したスクリーンリーダーのソフト:NVDA(フリーウェア)、JAWS(有限会社エ
クストラ)
 (気づいた点)

① ログインから通訳選択画面までは問題ないが、サービスを利用するためにはマイクが必要。

※マイクが無いと「しばらくお待ちください」という画面になり、オペレータを呼び出すことができない。
※カスタマーセンターへのお問い合わせや緊急通報を利用する場合はカメラも必要。

② 相手先の電話番号を入力した後の発信ボタンが、点字では「ボタン」と表示され、何のボタンかが分かりにくい。

③ 通訳選択方法の文字ボタンが、スクリーンリーダーによっては、「文字」と表示されないことがある。
例えば、JAWSでは「文字ボタン」と認識されるが、NVDAでは「フォーム」と表示される等。

④ オペレータに繋がったタイミングが分かりにくい。

⑤ 通話中の場面にて、文字チャット画面の送信ボタンも②の発信ボタン同様、点字では「ボタン」と表示され、何のボタンかが分かりにくい。

⑥ 通話中の場面にて、送ったメッセージと一緒に日時(タイムスタンプ)が表示されている。画面で見る分には文字が小さいため気にならないが、点字だと毎回表示されてしまう。

例 

相手の発言

タイムスタンプ

タイムスタンプ

自分の発言

相手の発言

⑦ 一度に送信できる文字数が60文字までという制限があるため、送信した内容が途中で切れてしまっていても気づきにくい。

⑧ 文字入力欄から通話終了ボタンまでが遠い。

⑨ 通話終了画面に表示される「戻る」ボタンが、どこに戻るのかが分かりにくい。
(次回へ続く)

4.友の会紹介コーナー

 【初めまして♪大分盲ろう者友の会です!】

会長 藤本 秀治(ふじもと ひではる)盲難聴

 メルマガ読書の皆様、初めまして、大分盲ろう者友の会です。メルマガ初投稿です。
よろしくお願い致します。
 会の活動を紹介したいと思います。

大分盲ろう者友の会は今年で12年目を迎えました。
盲ろう役員は、監査や会則の見直し、活動を充実させる事に毎年苦労しています。
毎年4月に定例総会を開催し、毎月第3日曜日に学習会と定例会を行っています。
また県外から送られてくる会報誌、その他の連絡事項をメールやファックスで会員に配信し情報提供をしています。
 行事として実習を兼ねたスポーツ・観光・忘年会を実施しています。
 外出実習は賛助会員が盲ろう者に交代で派遣制度を使わず通訳・介助を行い、行事を共に楽しんでいます。
 昨年からコロナ感染拡大のため行事ができなくなり感染者が減少した時期を狙いできる範囲で活動をしています。
 自粛中は会員が集まれないので感染予防対策をとり活動を試みていました。
 養成講座や研修の現場での通訳体制が以前と大きく変化しました。
 10月頃から感染者が減少し友の会は活動を少しずつ再開しています。
 定例会で年度末までの行事計画も立て、
〇 出前講座「災害時要配慮者支援事業」として【みんなが助かる早めの避難】について講師を招き聴講します。

〇 スポーツ行事では「ボッチャ」の指導者を招いて体験する予定です。

〇 観光兼外出実習で津久見市四浦半島で河津桜の花見。佐伯市で佐伯寿司を堪能。

 行事の様子は会報誌に写真掲載します。
 会報誌は年2回発行し他団体にも配信させて頂いています。
 今後の希望は盲ろう者の社会参加促進の為に通訳・介助員養成、派遣制度の充実を計り自由に活動できるようになってほしいと思います。
 また、会員を増やし楽しく社会参加できる活動を目指していきたいです。

5.みんなの広場(リレートーク)

「なますて たすけて」

東京都 大河内直之(おおこうち なおゆき)全盲

 僕の自宅の近くに、非常においしいインド料理のお店があります。開店してから8年ほどになりますが、1か月半に1回程度のペースで通っていました。
 しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年4月頃からお店は時短営業になり、テイクアウトが中心となってしまいました。その直後、お店の前に次のような張り紙が出るようになりました 「なますて  たすけて」。
 お店の名前は別にあるのですが、この名前にインパクトがあって、以来僕の家ではこの店の名前が「なますて たすけて」になりました。ある日、テイクアウトのカレーを買いにお店を訪ねたとき、インド人の店主は「あれ、なかなかうまいでしょう」と陽気に話していました。その後、2021年になり、その文字はさらに大きくなりました。
 今でも、お店の前を通りかかると「あ、なますて たすけないと…」と思って、ついついテイクアウトしてしまいます。なかなか商売上手なお店ですね。

6.編集後記

編集担当 今本 由紀(いまもと ゆき)

早いもので今年も残すところあと数日となりました。今年もコロナに振り回される年でしたね。また、全国盲ろう者大会も昨年に続いて中止。
 来年は終息し、今までの生活に戻り、全国盲ろう者大会も開催できるといいですね。
 コロナはもちろんですが、インフルエンザが流行る時期です。十分に気をつけて楽しいクリスマスをお過ごしください。今年は牛のように周りに振り回されず何があっても動じない、のんびりと過ごすことを新年に決めた私ですが、いろいろありすぎた一年でした
(苦笑)。

 来年は寅(とら)です。『決断力と才知』と言われています。寅のようにコロナ禍に負けず、何事にも決断、才知を活かして、良い一年をお過ごしくださいね。

————————————————

【発行】
全国盲ろう者団体連絡協議会

【連絡協議会ホームページ】
http://www.jfdb.org/

————————————————